For job hunter 特別企画記事




 

 


 

 








インテリアデザイン・建築業界を目指す人へ 企業が求める人物像を聞く




今、デザインの現場では若手はもちろん、即戦力が求められている。本項では、商業空間のデザインにおいて、人材を求める2社に話を聞いた。インテリアデザインや空間づくりの仕事の一端を知ることで、よりスピーディーに仕事のステップを踏んでいけるきっかけとなれば幸いだ。
 

 







自分のやりたいことを突き詰められる人が活躍できる<br />













同社がデザインを手掛けたカジュアルバル「MITAN」




Q:増田さんがデザイナーになった経緯を教えてくだい。


 


私は高校生の時からデザイナーになりたいと思っていて、大学に入る頃には空間づくりに携わることを決めていた。大阪の芸術大学を出た後、設計施工の会社に就職しました。広島で4年、東京で6年間、主に大型の商業施設を中心にデザインの仕事に携わり、その後、インテリアデザイン事務所のエイジに転職します。エイジでは憧れでもあった佐藤一郎さんのもと、飲食店のデザインを多く担当しました。独立後も飲食店やホテルのプロジェクトが多いですが、今後は更に仕事の幅を広げていくために一緒に仕事をしてくれるメンバーを募集しました。


 


Q:マスタードに入ったら、まずどんな仕事を任されるのでしょうか。


 


基本的には一緒にプロジェクトに付き添ってもらいながら仕事の一連の流れを覚えてもらい、出来れば早い段階からデザインに取り組んでもらいたいと思っています。もちろん、デザインのコンセプトやディレクションは私がメインで行いますが、施主とのやり取りや、基本的な図面制作などはすぐ任せられるような体制にしたい。弊社はまだ設立3年目なので、携わるプロジェクトは、コンペなどではなく、施主から直接依頼されるケースがほとんどです。積極的にコミュニケーションを取って、良い店をつくっていこうという気持ちが一番大切だと思います。


 


Q:どのような人材を求めていますか。


 


デザイン事務所の仕事は人と人が密にやり取りをする必要がある。また、弊社のように小さい規模だと、所員と一緒に過ごす時間が長くなる。人と人との相性は、会社に入ってみなければ分からないこともあると思いますので、私が応募してきた人との相性を見るように、選ばれる側もこの会社や人と一緒に仕事ができるかを考えて、できれば面接などではその人なりの人柄を見せてほしいです。


 


Q:インテリアデザイン業界への就職を目指す人に一言お願いします。


 


デザイン業界は外から見ると華やかですが、いざ足を踏み入れるとその大変さにギャップを感じると思います。現場だって施工中のキレイでない状態の空間で過ごすことがほとんどだし、学ばなければいけないことも多い。しかし、「飲食店が好き」や「ホテルが好き」といった気持ちや、かっこいい空間をつくりたいという思いを突き詰められる人には、きっと苦ではなく、様々な経験ができる仕事だと思います。デザイン事務所に入りたいと考えている人は、やがて独立することも視野に入れているかもしれない。与えられた仕事をただこなすのではなく、すべての仕事が将来の自分につながっていると考えて取り組めば、大きく成長していけると思います。




 


 


 





日本のものづくりを現代の視点で国内外に発信する











隈研吾建築都市設計事務所が設計を手掛けたゲストハウスRoof/Birds




Q:TIME & STYLEとはどのような会社でしょうか。


 


家具の企画やデザイン、製造、販売までをトータルで手掛けるブランドです。東京や大阪に販売拠点を持つ他、2017年にオランダ・アムステルダムにオープンした直営店や、上海にもショールームを構えています。取り扱う商品はソファやテーブルといった家具からファブリック、食器、植栽・盆栽など多岐に渡ります。取り扱い商品のほとんどがオリジナルデザインであり、それらは北海道・旭川の自社工場や、提携している家具工場で製作しています。


 


Q:TIME & STYLEが扱う家具の特徴を教えてください。


 


ショップでの商品販売は事業の3割程で、BtoBのコントラクト事業が大きなウェイトを持っています。コントラクト事業は、デザイナーや施主の求めに応じてプロパー製品から特注家具まで、様々な空間に合わせた家具を提案することが主です。社内には設計チームがあり、ホテルやショップといった商業空間、住宅に向けた家具づくりにも取り組んでいます。また、日本を代表する建築家、デザイナーとの商品開発も進めています。それらの経験を生かし、単純に家具を販売・納入するのではなく、店舗のオペレーションまで考慮した提案や、ファブリックや壁面造作といったインテリアをトータルで提案することを得意としています。


 


Q:どのような人材を求めていますか。


 


弊社には工場やショップ、設計、営業など家具、インテリアに関連する様々な部署があります。ただ、いずれの部署においてもクライアントやユーザーが何を求めているかを知ることがとても大事になります。特にコントラクト家具は、プロジェクトによって提案内容が変化するため、柔軟に対応する能力が求められます。
弊社では、自社で製作した家具の他、日本全国の工芸技術や素材を活用したプロダクト製作も積極的に行っていて、地場の産業との協業で生まれる製品も数多く取り扱っています。日本の伝統や文化を受け継ぎ、守ると同時に、リアルな現代の日本のライフスタイルに取り込むこと、そして海外に向けた発信にも力を入れていきたい。そのためにも、ブランドに共感し、今何が求められているかを積極的に探求できる人に出会いたいですね。










 


 


 











とあるベテランデザイナーに最近の若手の働き方について聞くと、きちんと定時で帰り、効率よく仕事をこなしていているが「根性が足りない」「もっと仕事を突き詰めるべきだ」という。さて、このベテランデザイナーの言葉が「残業しろ!」「会社のためにもっと働け」と聞こえるかどうかは、デザインという仕事に対する個人のスタンスにも拠る。かつてのデザイン事務所は、オフィスや現場に泊まり込んで、徹夜で仕事をするデザイナーの姿が多く見られたが、その長大な時間が、偉大なデザインを生み出していたかと言えばそうではないだろう。昔は提出用の図面を青焼き機で刷る手間であったり、資料写真を雑誌からピックアップする時間が必要になったりと、単純な作業時間が存在したことも大きい。現在であれば、大きな図面でもメールで簡単に送り、資料もネットですぐに見つけることができ、これからICTの発達により、更に作業時間は短縮されていくはずだ。では、掛ける時間が半分で、これまでと同程度のデザインを提案していくことが、デザイナーという職能なのだろうか。



答えは否(であってほしい)。テクノロジーの格差、物理的な距離によって生まれる差がなくなっていくと同時に、デザインの付加価値は、デザイナーがどのような思想を持っているか、趣味、好きなもの、何を見てきたかなど、よりその個人に見出されることになるのではないか。
技術や知識が共有され、誰しもが高いクオリティの空間や商品を生み出せるようになるシステムづくりもデザインであれば、そこから抜け出して、未開の価値観を切り開いていくのもデザインの力だ。その力を磨くための時間が、今のデザイナーは昔に比べて恵まれていると捉えることもできる。もし先輩や上司から「もっと仕事しろ!」という言葉をかけられた時は、脳内で「デザインのことを考える時間があって羨ましいぞ!」に変換してみれば、デザイナーとしてすべきこと、したいことが見えてくるかもしれない。


 





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